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書を捨てよ、ビデオ観よう。
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SF異星獣ガー
STAR CRYSTAL

1985年
アメリカ映画
94分

〔監督・原案・脚本〕ランス・リンゼイ
〔脚本〕エリック・ウォスター 〔特撮〕ルイス・アバナシー 〔音楽〕ダグ・カトサロス
〔出演〕ジャトソン・キャンベル/ジョン・スミス/フェイ・ボルト/テイラー・キングスレイ/マーシア・リン

SF異星獣ガー ビデオジャケット




西暦2035年、火星探査で採取された未知のクリスタル。
 
このクリスタルのエネルギーによって謎の生命体「ガー」が誕生し、宇宙船の乗組員を殺していく定番の『エイリアン』のパクリ映画。
 
…と思わせておいて、生存者が残り二人になった時点で対話を通じて友好関係を結び、心温まる交流を繰り広げる『E.T』まがいのSFヒューマン作品にシフトチェンジしてしまうとんでもないプロットの映画である。
 
しかもガーの顔の造形がE.Tそのまんまじゃないか。

 
さんざん人間を殺しておいて、「自衛のために仕方なく殺したんだ」と言い訳するガーを許してしまう主人公は完全なるお人よしだ。
 
というか前半で、ガーが宇宙ステーションのコンピュータをハッキングしたために、ステーションの原発が爆発して大勢殺されたのを考えると、お人よしを通り越してただの大バカ野郎である。
 
仲良くなった後は、ボードゲームをなんかやったりして和やかムードになる…なんだかなぁ。




ガーとの心温まる交流
▲今までのことは水に流して、ガーとの心温まる交流を繰り広げる。


ガーの被害者たち
▲救われなさすぎる被害者たち



 
しまいにゃ、「ひとりで宇宙を旅してみたい」と言うガーのムチャブリに応えて補給ステーションをプレゼントする。
 
補給ステーションに乗ったガーが、果てしない旅へ出るとともに
 
星のクリスタル~♪ あなたは旅人~♪
 
なんて脱力感満点な ほのぼのとしたテーマソングが流れて映画はおしまい。

これはギャグなのか?天然なのか?
 
ともかく広大なB級映画の宇宙には、とんでもない映画もあるんだと溜息をつかされた。
 

 
ちなみに溜息をつかされたのは、私だけではないらしく、パッケージをめくった裏面にある解説を担当した児玉数夫氏も、同様に困惑した様子の解説文を書いている。

こんなとんでもない作品の解説を書かされることになった児玉氏には心底同情してしまう。


「解説を書いてくれって言われてもなぁ、こんなヒドイ映画を酷評する以外にどうやって解説しろって言うんだよ・・・。まぁとりあえずハマーフィルムあたりを引き合いに出して文章埋めるか。でもこのエイリアン、どう見てもETだよなぁ・・・。ここは正直にETに似てるって書いちゃおう。うん。」


などとぼやきながら氏が原稿に向かっている姿が眼に浮かぶ、そんな解説文だった。
 



また、この度レビューのために再見したところ、他にも妙なシーンが散見された。



シェリーという女性クルーが、女中尉ビリーの死体を発見してしまう。

ガーの残した粘液まみれになって茫然自失となったシェリーを別のクルーが保護し、船長に無線連絡をする。

「中尉に何かあったらしいの!シェリーの服は粘液だらけよ」

それを聞いた船長と黒人隊員はケラケラ笑いながら一言。

「やっぱり!ビリー(女中尉)はレズだったのか!」

・・・危機的状況に間の抜けたひどい下ネタである。



下ネタをかます船長殿




下に貼った動画のワンシーンもなかなか味があるよ。

ガーが発見された星で撮影された、探索記録ビデオを再生してガーについて知ろうとする主人公達。

しかしビデオには宇宙飛行士が延々とキャッチボールをしている映像しか入っていなった・・・・。


▲まったくもって無意味なシーン




こんな具合に突如、すべり気味のギャグが挿入されているが、これがなんとも言えない侘しさを添えていて雰囲気満点である。




こんな本作の監督・原案・脚本を担当したのはランス・リンゼイ。

そのフィルモグラフィーを見ると、本作の他に監督をしたのは、ガーの数年後に公開された『バトル・サバイバー(原題REAL BULLETS)』という作品以外に確認できない。

『バトルサバイバー』は未見だが、ガーの出来を見る限りだいたいの察しがつく。

これ以降は監督業をほされたか、翌年に『Quietfire 』というビデオ作品に役者として出演したのを最後に、フィルム業界から姿を消したのだった。

いったい、ランス・リンゼイはどこへ行ってしまったのだろう・・・。



星のクリスタル~♪ あなたは旅人~♪


今宵私は、このテーマソングを彼に捧げたいと思う。






▲ランス・リンゼイに捧ぐ



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ネタバレ、下品な表現があります。
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